3.地域資源を活用した農園増設と人材育成

本プロジェクトの構想を実現させていくためには、現場で実際に自然活性化型の農業システムを構築し、持続可能で魅力的な地域経済を創っていくメンバーを募り、育てていくことが必須です。どんなに周りの人が農業を盛り上げたいと思っても、最終的に現場で嬉々とはたらく新しい人々がいない限り、土づくり産業を生み出すことはできません。ゆえに、私たちは農園増設と人材育成を活動の根幹にすえています。

ⅰ) 農業人才の収集と育成@自然農法無の会

コンセプト

現場・地域で活動をしていく志のある優秀なメンバーを集めるために、この1年間、私たちは自然農法無の会において幾つかの関わり方を用意しました。無の会を訪れる人による多様で多くの関係人口を作ってきた中で定着するメンバーが生まれたり、自分たちの組織・事業の強みと今後の方向性が見えてきました。

取り組み

以下が、2024年の農業人才の収集と育成のまとめになります。

【主力・現場メンバーの獲得:新規2名が参加し、うち1名が10月に離職。】

安田志穂

会津出身。喜多方市の山奥にある熱塩温泉の旅館「ふじや」の元若女将。野菜の少量多品目栽培と、イベント時の出張料理、無添加の加工品づくり、マルシェ出店などを担当しながら、チームの若女将的存在として、若手男子たちの手綱を引く。

伊藤彩奈

アメリカ・ミネソタ州出身。2023年秋に家族ごと日本に移住。米国ではオレゴン州やミネソタ州にて羊の放牧や有機野菜の栽培を4年ほど担当。無の会では少量多品目栽培を担当。方針の違いにより10月に退職。

2025年度は、新しく二人が加わります。

        • 現役京大生・林田くんが休学して半年間スタッフとなる。
        • 北海道で働いていたななえちゃんが会津に移住。スタッフとなる。

【リモートメンバーの受け入れ:3名 】

月に一度、3~5泊ほどしながら継続して農業を学びつつ、無の会と連携する人々のこと

本田英宣

過去28年間、神奈川県・藤沢市にて衣食住すべてを扱うセレクトショップ「Good Design Market KOK」を経営。会津の日本酒限定のオンラインショップも運営。

中村拓海

高度外国人材の就労・留学支援を行うSOCIARISEや、同専門メディア・MICHI、外国人専門の就職/転職サイト・Your Careerを経営。

來田文香

全国的なBtoB専門の有機農産物卸の老舗・(株)風水プロジェクトにおける、農家さんからの仕入れ担当。子どもたちの食育や東京や千葉における有機給食の導入を推進する「ママエンジェルス」のメンバー。 

~リモメンの進展~

2024年12月、本田さんは湘南で経営していたセレクトショップを閉店して、ご夫婦で店舗ごと会津に移住しました!12月27日に会津若松市の代表的な大通りである「神明通り」沿いにセレクトショップ兼飲食店「&farm」をオープン。 今シーズンは無の会にてハバネロの栽培を行う予定です。

【無来人の受け入れ:230名】

農園に単発で短期滞在して農作業を行う人のこと

2024年4月~12月の間に、東京・京都を中心に、大阪・兵庫・茨城・長野・宮﨑・愛知・新潟・アメリカ・イスラエル・フランス・インドなどから来訪。

見えてきた強みと課題

強み

これまで農業に関わる予定のなかった実業家や個人事業主さんを集めることができたことです。短期の農業体験者の受け入れも、上限をあまり設けずに通年でほぼ毎日人を受け入れることができました。通常業務をフルで回しながらも一年を通して大きな人の流れに対応できる力を培えたことは、大きな収穫です。

今後の方向性

無來人の人数が増えた中で、農園側の受け入れ体制をもっと整理していこうと思っています。その中で、こちらの農業に定期的に関わっていく人を増やしたり、フリーランスや中小事業主としての仕事を続けながら農業に携わっていける仕組みを創っていきます。

ⅱ) 第二、第三農園の新設 @会津美里町箕作地区・西勝地区

コンセプト

県内最大の地域循環型の有機栽培を行う自然農法無の会に加えて、地域資源をベースに土を豊かにする新しい農園を増設していきます。そうすることで地域での土づくりの体制や、同時に地域自給型のシステムを作っていきます。

ネックとなるのは、人・土地・設備の確保です。特に新しく独立する若者が最低限の農業技術を身につけ、その人と共に農園の運営に携わる人が集まり、育つ流れを作れることができれば、あとは資金さえ集めることができれば農園増設は現実化していきます。

進展状況

  1. 現役メンバー・大島武生が2026年春より、会津美里町の西勝地区に新しく農園を作ることが決定。2024年4月に「たけおハウス」を購入し、営農の拠点となる家と倉庫と田んぼを入手。
  2. コミュニティ拠点のある会津美里町の箕作地区においても、新しい農場を作っていくべく拠点整備中。

耕作面積の推移

  • 農地の分布:町内6地区+町外3地区
  • 町内(地図の範囲):杉屋、永井野、松沢、中道、箕作、西勝地区
  • 町外:湯川村、昭和村、塩川地区
  • 面積: 16ha(R5年)→17.5ha(R6年)→19ha(R7年)

【独立に際して】by 大島武生

会津百姓一揆プロジェクト、独立営農第一号になる大島武生です。自然農法無の会での研修を通して得た農業技術と地域住民との繋がりと、ZEN-BUの活動を通して育まれた人脈と資金のネットワークを土台に、2026年から新規就農をします。

私は大学を卒業してすぐに無の会で研修を始めました。そのきっかけは、大学を休学して農家巡りをしていた際に、「いつか田舎暮らしをしよう」と考えながら一旦都会で働いているうちに、技や知識が豊富なジジババたちがいなくなってしまうのではないかと感じたことでした。実際に会津に移住してからは、人口減少や文化の消滅が自分事の問題として感じられるようになりました。そこから、もう一つの拠点を創ることで、より多くの知恵や経験を地域から受け継ぐことができるようになり、同時に農業や田舎暮らしを希望する人の受け入れを加速させることができるのではないかと考え、独立を決意しました。

独立後は、 無の会と農業資材や機械の面で協力しつつ、町内でお米の栽培面積を拡大させ、就農後5年目の時点で、農業純利200万円を得ることを当面の経済的な目標とします。農作業の人員やより良い農法の情報収集はZEN-BUを中心とするネットワークを活用し、狩猟、養蜂、教育活動を農業と並行しながら、地域の課題解決やより良い暮らしの追求を行います。

ⅲ) 会津内外での農業事業の支援 (i.e. 新規事業起ち上げ・事業承継)

コンセプト

0次産業として日本の未来を支える農家を増やしていくためには、上記の会津での取り組みに加えて、現在農業に従事していない事業者・団体さんや、志を同じくする現役農家さんと提携していくことが大切です。その上で、これから日本全国、どの地域においても重要になってくる以下の三つに取り組みました。

これらの活動から得られた知見を広く他の農家さんや事業者さんにもシェアしていくことで、土づくりの活動を全国的に拡げていくきっかけになればと思っています。

取り組み

  1. 将来性ある現役農家さんの若者の受け入れ支援
    • 農業法人自然農法無の会に対して、今後農業に興味がある・従事していきたいと思っている若者をどのように集め、受け入れ、定着させていくのかの体制やフローを構築しています。

2. 個人・法人農家さんの事業承継

    • 農業法人自然農法無の会において、74歳の農園創業者・代表から20~30代の若手メンバー5名による引き継ぎをサポートしています。法務・税務・労務の3点における事業承継が、2025年3月ごろには完了見込みです。
    • 沖縄県元部町にある無農薬マンゴー農園「長堂ファーム」において、87歳の農園創業者・代表から事業継承のサポート及び、新規就農と経営サポートを行っています。30代の若手現場メンバー2名と経営サポーター2名の体制ができあがり、2025年3月より現場メンバーが移住して、栽培技術の本格的な研修・承継がスタートします。また、本案件は0次化パートナーである(株)Santasuさんによる農業への新規参入支援も兼ねています。

3. 中小事業主さんの農業への新規参入支援

    • 2025年より0次化パートナーである(株)Nomadicsさんの新規農業支援を行う予定です。2024年は現地視察と打ち合わせと土壌検査の技術者さんの紹介をしました。